2025年7月の投資報告です。
今月もいくつかの銘柄を買い増したり、新たに購入したりしましたが、その中のひとつが「はせがわ(8230)」です。
仏壇や仏具を取り扱う、いわゆる“死にまつわる”業界に属する企業です。
実はちょうど1年ほど前にも、同じような理由で葬儀会社「ティア(2485)」に投資していました。
ティアは2006年の上場以来、減配なしという堅実な配当実績を続けており、私が買った当時の利回りは約4%。
株価もじわじわと上昇を続けており、今も安心して保有しています。
こうした“死を扱う業界”に投資している理由のひとつに、ピーター・リンチの言葉があります。
彼はアメリカの葬儀会社 Service Corporation International(SCI)について、こう語っています:
“If you had invested $980 (the cost of a traditional burial) in the stock in 1969, you would have had $14,353 by 1987.”
「1969年に葬式代980ドルをその株に投資していたら、1987年には14,353ドルになっていたでしょう。」
日本でも、2035年ごろまでは亡くなる人の数が増えると予想されています。
はせがわは仏壇業界でトップシェアを持ち、2025年からは「配当性向30%または1株15円以上」という積極的な方針を打ち出し、予想利回りは約4.9%。将来への種まきも進めています。
『リメンバー・ミー』のように、死は“終わり”ではなく、“つながり”や“記憶”を受け継ぐ始まりでもある。
そんな思いも込めて、今月の投資から一つ、はせがわをご紹介します。
なぜ今、はせがわ?──ティアに続く“死への投資”
はせがわ(8230)の株を買ったきっかけは、1年ほど前に購入したティア(2485)の株価を久しぶりに見たこと。
ティアは、名古屋を拠点とする葬儀会社で、私は配当利回りが4%ほどだった頃に100株だけ買いました。
当時から地味だけど好感が持てる会社で、2006年の上場以来、一度も減配していないという堅実さに惹かれて投資しました。

それから1年が経ち、配当もきっちりもらえて、株価もじわじわ上がってきている。
「そういえば、ティアみたいな銘柄って他にもあるのかな?」と考えたときに、ふと思い出したのが「はせがわ」でした。
仏壇・仏具の会社。地味だけど、なくならないもの。
調べてみると、業界でトップシェアを持っていて、2025年からは「配当性向30%または1株15円以上」という積極的な配当方針を掲げているとのこと。
しかも、現時点の予想配当利回りは約4.9%。これはかなり高い水準です。
正直、ティアほど業績が右肩上がりではないし、過去には減配もしている。
でも、そのぶん今後の成長に向けた投資もしているようで、「ちょっとだけ買ってみようかな」と思い、30株だけ購入しました。
「絶対に伸びる!」という確信があるわけではありません。
けれど、こういう“地味で目立たないけど、必要とされる存在”には、投資家として静かに期待したくなるのです。
不人気業界にこそチャンスあり|ピーター・リンチの教え
はせがわやティアのような、いわゆる“死に関する企業”に投資していると言うと、ちょっと驚かれることがあります。
「暗そう」「縁起でもない」「テンション下がる」──たしかに、そう感じる方もいると思います。
でも、私にはその“重たさ”こそが、逆にチャンスだと思える理由があります。
それを教えてくれたのが、ピーター・リンチという投資家の考え方です。
リンチは、一般の個人投資家にもわかりやすく、実践的な投資術を広めたことで有名な人物。
彼のスタイルのひとつに、「気の滅入るような業界にこそ宝がある」という考えがあります。
実際、彼はアメリカの葬儀会社「Service Corporation International(SCI)」を“沈んだ業界でのお気に入り銘柄”として取り上げ、こう語っています:
“If you had invested $980 (the cost of a traditional burial) in the stock in 1969, you would have had $14,353 by 1987.”
「1969年に葬式代980ドルをその株に投資していたら、1987年には14,353ドルになっていたでしょう。」

誰も注目しない、むしろ避けたがるような業界でも、しっかりと成長する会社はある──というメッセージが、このエピソードには込められています。
私がティアやはせがわに注目したのも、この考えに影響されてのこと。
“なんとなく避けられがちだけど、社会に必要とされる会社”。
そんな存在こそ、株価が安く放置されていることも多く、長期投資の入り口としては悪くないと思っています。
葬儀と仏壇|今後の展望
ティアやはせがわのような、“死に関わる企業”は、これからも伸びるのでしょうか?
少なくとも、しばらくの間は「必要とされ続ける業界」であることは間違いなさそうです。
というのも、日本は今まさに世界トップクラスの高齢化社会に突入していて、2035年ごろまでは亡くなる人の数が増え続けると言われています。
ただ、実際の市場はそう単純ではありません。
たとえば、葬儀業界。
件数自体は増えていても、「家族葬」や「直葬(火葬だけ)」などが主流になりつつあり、1件あたりの単価は20年で約20%も下がっているそうです。
件数が増えても単価が下がると、業界全体の売上はあまり伸びないというわけです。

仏壇業界も同じような変化が起きています。
昔ながらの立派な仏壇ではなく、リビングに置けるようなコンパクトでモダンな仏壇が主流に。
若い世代を中心に、“家に仏壇を持たない”という選択も増えているといいます。

つまり、需要が消えるわけではないけれど、その形がどんどん変わってきているのです。
そんな中で、ティアは都市型の葬儀ホール展開やサービスの多様化によって、右肩上がりの業績を維持しています。
はせがわも、仏壇販売だけに頼らず、ギフト事業やリフォームなど新しい収益の柱づくりに挑戦中です。
“静かに成長している”というよりも、“静かに変化に適応し続けている”業界。
私はこの変化の過程そのものにも、投資の面白さを感じています。
配当・成長・多角化──ティアとはせがわの違い
ティアと、はせがわ。
どちらも「死に関する業界」に属する企業ではありますが、よく見ると性質はずいぶん異なります。
そして、その違いこそが、私にとって投資対象としての“面白さ”でもあります。
まず、ティアは葬儀会社。名古屋を拠点に、関東・関西へも展開し、都市型の小規模ホールを中心に成長しています。
2006年の上場以来、一度も減配していないという安定感があり、業績も右肩上がり。
積極的なM&Aやサービス多様化も進めていて、いわば「安定と成長を両立するバランス型」の企業です。
一方、はせがわは仏壇・仏具業界のトップ企業。
こちらはティアのような右肩上がりではなく、過去に減配もありました。
ですが、2025年からは「配当性向30%または1株15円以上」という方針に転換し、株主還元にも前向きな姿勢を見せています。
さらに注目したのが、はせがわの“変化に向き合う力”です。
仏壇や墓石のリフォーム・修復サービスを行うだけでなく、近年では「祈りの文化」を現代の暮らしに溶け込ませる試みとして、
飲食や雑貨を扱うライフスタイルショップ『田ノ実(たのみ)』を展開。
自由が丘や東京ソラマチなどに店舗を構え、味噌や出汁、おむすびなど“食と祈り”を結びつけるグロサラント型のショップを運営しています。
仏壇の会社が、おむすびや出汁を扱う?──最初は意外に感じましたが、
「大切な人を思い出す、日常の中の“祈り”」という軸がぶれていないところに、私はとても惹かれました。
表にすると、こんな違いがあります:
比較項目 | ティア(2485) | はせがわ(8230) |
事業内容 | 葬儀(主に都市型ホール) | 仏壇・仏具販売、墓石、文化財修復、飲食など |
上場時期 | 2006年 | 1961年(旧証取)、現在は東証スタンダード |
減配履歴 | 上場以来一度もなし | 過去に減配・無配あり |
配当方針 | 安定配当 | 2025年から積極配当(30% or 15円以上) |
予想利回り(7月) | 約3.7% | 約4.9% |
成長性 | 業績右肩上がり | 成長はこれから。多角化で仕込み中 |
多角展開 | M&A、会員制度、TLD事業 | リフォーム、寺社修復、田ノ実(食と祈り)など |
どちらが優れているというより、それぞれの立ち位置と方向性が違います。
私はこの2社を、「必要とされ続ける業界」の中でも“安定と変化”を象徴する対照的な存在として、どちらも長く応援していきたいと感じています。
リメンバー・ミーが教えてくれた「死のその先」
「死」をテーマにした投資と聞くと、どうしても暗くて重たい印象を持たれがちです。
でも私にとっては、このテーマには“静かだけれど確かな希望”のようなものを感じています。
その感覚の根っこにあるのが、ディズニー/ピクサー映画『リメンバー・ミー』です。
物語は、音楽が禁止された家に育った少年ミゲルが、死者の国に迷い込むところから始まります。
カラフルでにぎやかな死者の国。そこでは、生きている人に“覚えてもらっている”限り、死者は存在し続けるというルールがありました。
「誰にも思い出されなくなったとき、それが本当の死なんだ」というセリフは、深く胸に響きます。

ティアやはせがわが扱っているのは、まさに「人の記憶」や「つながり」に関わるサービスです。
葬儀や仏壇、供養の文化──それらは“悲しみ”だけのものではなく、
「大切な人を忘れないための営み」でもあります。だからこそ、地味だけど、社会にとって必要で、これからも残っていくと思います。
ちなみに原宿にあるメキシコ料理店「フォンダ・デ・ラ・マドゥルガーダ」は、映画の世界観が感じられるお店として知られています。
生演奏のラテン音楽、メキシコから輸入された家具やタイル、そして色鮮やかな装飾。
まさに“リメンバー・ミーの雰囲気”と連想させる空間だそうです。
そこでタコスを味わいながら、「ああ、死ってこういうふうに明るく向き合ってもいいんだな」と感じられる場所です。
死=終わりではなく、“つながりの始まり”かもしれない。
そんな前向きな気持ちを胸に、私は今回の投資報告を進めています。


目立たなくても、必要とされ続ける会社へ
派手なテーマ株や話題性のある成長株とは違って、葬儀や仏壇といった“死にまつわるビジネス”はなかなか注目されにくい分野です。
でも、ピーター・リンチが言っていたように、「気が滅入るような業界ほど、思わぬ大化け株が眠っている」こともある。
ティアと、はせがわ。
どちらも静かに、でも着実に、人々の記憶やつながりを支えてきた企業です。
ティアは配当を維持しながら着実に業績を伸ばし、今では地域密着の葬儀モデルとして安定した地位を築いています。
はせがわもまた、伝統産業の枠を超えて、飲食やライフスタイル領域にまで展開を始め、次の時代に向けて変わろうとしています。
どちらの企業も、華やかではないかもしれません。
でも、「目立たないけど、なくてはならない」。
そんな存在こそ、長く投資していくにふさわしいと私は思っています。
「死」は終わりではなく、
大切な人を思い出し、つながりを感じる“きっかけ”なのかもしれません。
そんな思いとともに、私はこれからも、社会の変化に寄り添いながら投資を続けていきます。
まとめ
今回は、2025年7月に新たに投資した仏壇販売最大手「はせがわ」と、以前から保有している葬儀会社「ティア」の2社を取り上げ、
“死にまつわる業界への投資”について紹介しました。
ピーター・リンチの投資哲学にもあるように、「気が滅入る業界」こそ成長の余地があります。
高齢化社会のなかで、葬儀・供養のニーズはしばらく続くと考えられ、
ティアは安定成長、はせがわは多角化による変化と成長を目指す対照的な企業です。
リメンバー・ミーの世界観とも重なる「つながり」や「記憶」を大切にするこの分野。
目立たなくても、なくならない。そんな企業への投資を、これからも続けていきたいと思います。
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